目を覚ました恭也は先ほどまで自分がいた場所とは違う場所にいることに若干戸惑った。

そんな恭也にライとミントはこれまでの経緯を簡単に説明した。

それに納得した恭也はその場に自分の助けた少女―ミルリーフがいないことに気づく。

 

「それで……あの子はどこに?」

 

「ミルリーフなら隣の部屋にけ」

 

ライの言葉が終わる前にミントがライの口を慌てて塞ぐ。

 

「み、ミルリーフちゃんなら用事があるからって隣の部屋に入ったよ」

 

「……そうですか」

 

ミントの慌て様に何か隠してると見抜くが聞いても話さないとだろうなと思い頷いておくことにした。

 

「ふごふご!」

 

「あ、ごめんごめん」

 

口を塞いだままだということに気づきミントは謝りながら手を離す。

強く塞がれていたのかライは荒く息をつく。

 

「はぁ、はぁ……死ぬかと思った…」

 

しばらく息をつき整えると小声でミントに聞く。

 

(聞かれたことに答えようとしただけなのに、いきなり何するんだよ)

 

(ライくん、剣のこと彼に言おうとしたでしょ?)

 

(そうだけど……それがどうしたんだよ?)

 

(どうしたって……剣のことは彼に言わないようにってミルリーフちゃんから言われたじゃない)

 

(あ……)

 

(もう……)

 

「あの……」

 

「え、あ、なにかな?」

 

「聞こえてるんですが……」

 

「「えっ!?」」

 

二人の素っ頓狂な声が部屋のみならず、家全体に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Lost Memory

 

【第一章 侵食汚染】

第三話 呪いの魔剣

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どこから聞こえてたんだ?」

 

「最初からですけど……」

 

「「……」」

 

二人の顔に一筋に汗が流れる。

 

「え、え〜と……あのね」

 

明らかに動揺しているミントはどう誤魔化すべきか悩む。

ライに至っては墓穴を掘るまいと思ってかだんまりである。

 

「とりあえず、剣というのは?」

 

いつまでたってもそんな様子の二人に恭也は自分から問いかける。

 

「えっと、その……」

 

「……」

 

恭也が問いかけても状況は変わらずだった。

 

「もしかしてあの時俺が使っていた剣のことですか?」

 

「「!?」」

 

恭也の更なる問いかけに驚愕の表情を浮かべる二人。

そんな二人の表情を見て恭也は確信した。

 

「あの剣がどうかしたんですか?」

 

「そ、その前になんでわかったんだ?」

 

「いえ、聞いても明確な答えが返ってこなさそうだったので、かまをかけさせていただきました」

 

「「……」」

 

「そういえばあの剣はどこに?」

 

「え、えっと……」

 

ミントは恭也の質問にまた困った表情を浮かべる。

ライは結局ばれてしまい自分の努力が無駄になったことに若干落ち込んでいた。

二人がそんな状態なっている中、剣を隠しにいったミルリーフが帰ってくる。

 

「あ、気がついたんだ」

 

上体を起こしている恭也を見てミルリーフは安心そうな笑みを浮かべる。

 

「君は大丈夫なのか?」

 

「うん。 あなたが守ってくれたから」

 

「そうか……」

 

恭也もミルリーフと同じような表情を浮かべる。

 

「そういえば……ミルリーフ、でいいかな?」

 

「うん」

 

「ふむ、じゃあミルリーフ、さっきそちらの二人にも聞いたんだが、あのときの剣を知らないか?」

 

「……覚えてるんだね」

 

「さすがにさっきのことだしな」

 

「ご、ごめんねミルリーフちゃん。 私たちが口を滑らせちゃったから」

 

口を滑らせたというのは少し違うような気がするが……。

恭也は内心そう思う。

 

「ううん……どの道覚えてたんなら変わらないよ。 だから気にしないで」

 

ミルリーフはそう笑みを浮かべながら言う。

それに二人は複雑そうな顔で頷いた。

 

「それで、剣のことだったよね」

 

「ああ」

 

「あれはミルリーフが預かってるよ」

 

「そうなのか……なら」

 

「でも、返すことはできないの」

 

ミルリーフの言葉に恭也は首を傾げる。

 

「なぜだ?」

 

「あれは人が扱っちゃいけないものだから……」

 

「扱っちゃ……いけない?」

 

「うん……」

 

「それはいったい」

 

恭也が言葉の意味を尋ねようとしたとき、外から爆発音が聞こえてきた。

そしてそれと同時に感じる気配が複数あった。

 

「な、なんだ!?」

 

「そ、外からだよ!」

 

ミルリーフがそう言うとライはすぐに外へと駆け出す。

そしてそれを追うようにミントとミルリーフも出て行く。

 

「いったい何が起きたんだ?」

 

恭也はそう一人呟くとベッドから立ち上がり三人のアトを追った。

 

 

 

 

 

 

 

「またお前らか」

 

「……」

 

外に出るとそこにはライたちと向かい合うように剣やら斧やらを構えた男たちがいた。

恭也はその男たちに見覚えがあった。

 

「あの時と同じ……?」

 

そう、恭也が戦った男たちと同じ服装をしていたのだ。

だが顔からするとそのときとは違う奴らであることから……

 

(部隊か何かがあるのか……?)

 

そう推測する。

恭也がそう考えていると目の前の男たちは突如ライたちに襲い掛かる。

ライは男たちに応戦するように剣を構え迎え撃つ。

その後ろではミントが杖を持ち何やら召還術を唱えている。

 

(明らかに不利だな……)

 

ライが三人の男相手に戦っているがその表情は少しつらそうな感じだった。

苦戦するライを援護するようにミントが召還術を唱えるが男たちに効いている様子はなかった。

まるで痛みがないかのような表情で男たちは攻撃を続ける。

恭也はこのままではまずいなと思い加勢しようとするが、加勢しようにも武器がない。

飛針や鋼糸はあるがそれであの男たちを倒せるとは思えない。

どうすべきか。

そう悩んでいたときだった。

 

『呼べ、我を』

 

それはあの時も、気絶しかけていたあのときも聞いた声。

 

『あの者たちを助けたくば、我を呼べ』

 

まるでその様子を見ているかのように言う。

 

 

 

 

 

 

 

急激に高まる魔力。

それをミルリーフは感じ取る。

いや、ミルリーフだけならずその場にいた全員が感じ取る。

その魔力は……恭也から流れていた。

 

「それを呼んじゃだめ!!」

 

ミルリーフは叫ぶ。

だが、それは恭也には届かず……

 

「来い、バゼルシャルト!!」

 

呼ばれたその魔剣は恭也の右手に現れた。

 

『我はバゼルシャルト。 かつて「忘却」と呼ばれた呪いの神剣』

 

その声はその場にいた誰も耳に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

【咲】 半分も書けてた割にはずいぶん時間かかったわね。

う〜ん、いろいろと忙しくてね〜。

【咲】 遊んでただけの癖に。

し、しししししつれいな!!

【咲】 なんでどもってんのよ。

べ、別に図星を突かれたからじゃないぞ!?

【咲】 あんた、墓穴って言葉知ってる?

も、もちろん。

【咲】 ……。

う、ううう……。

【咲】 はぁ……まあいいわ。 次回はもう少し早くできるようにしなさい。

善処します。 ではまた次回〜ノシ

【咲】 次回も見てね〜♪

 

 

 

 

 

 

感想は掲示板かメールにて。

 

 

 

 

 

 

 

 

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