このSSは拙作の『魔法少女リリカルなのはB.N』と、『MagusTale〜世界樹と恋する魔法使い』のクロスです。

リリカルB.Nに関しては第三章という時間軸、Magusに関しては初めからという時間軸になっております。

そのため現在につきましてはB.Nの三章が公開されていませんので、ネタバレな部分が数多くあると思われます。

ですのでそれでもいいという方、見てみようと思う方のみ、どうぞお読みくださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MagusTale B.N〜蒼き夜に輝く世界樹〜

 

 

プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここがどこかもすでに判別出来ないほど、周りが海で満たされる大海原。

その海上を非常に不釣合いとも言える一隻の手漕ぎボートがゆったりとした速度で横断していた。

ボートに乗っているのは見ただけで三名……黒髪の青年と茶色掛かった黒髪の少年、そして蒼いセミロングの少女。

彼らの乗るボートには他にも荷物となるものが僅かに詰まれており、その周りには何やら菓子袋が散らばる。

おそらくその菓子を食べたのであろう少女は悶々と海面を眺め、青年と少年は一点を見詰めて僅かに溜息をついていた。

 

「やっと、目当ての場所が見えてきたな……」

 

「そうだな……しかし、他に良い手は浮かばなかったのか、大樹? 如何に早急に伝えないといけないとはいえ、手漕ぎボートで大海原を横断するのは無茶が過ぎるぞ」

 

「仕方ないだろ。あそこへ行く船なんて一隻もなかったし、借りられる船もこれしかなかったんだからな」

 

大樹と呼ばれた少年の言葉に青年――恭也はもう一度僅かばかりの溜息をついてしまった。

この二人、恭也の父である士郎が生きていた頃からの付き合いという事でそれなりに古い仲でもある。

しかし、大樹の思い立ったら行動という猪突猛進な性格にはいつもそれなりに恭也は苦労していた。

そして今回、父親が遺書にも見える手紙を残して家を出た事を義妹に伝えるという用事にも彼は駆り出されていた。

電話で済むことだろうとは言ったが、何でも電話では取り次げない場所にいるらしく、公共機関での連絡は不可能。

となると残る手段は直接という事になり、どうにか場所を探し出して恭也に頼み込み、同行をしてもらっているというわけだった。

 

「にしても……迎えに行ったときは驚いたな。まさか、恭也が子持ちになってるとは思わなかった」

 

「何度も言うが、リースは俺の子供じゃない……言うなれば、妹のような子だ」

 

目の前に見え始めた島から話題が変わり、大樹の話の矛先は海面を除く少女に向けられる。

名をリースというこの少女は恭也にとって妹的な存在であり、同時に信頼出来るパートナーでもあった。

というのも、大樹には話していないが、二年ほど前から魔導師として訓練していたときから彼女の存在はいつも傍にあった。

半年ほど前に終結を迎えたJA(ジェド・アグエイアス)事件の被害者でもあり、主犯の娘の一人でもある少女。

事件終結の僅か前に新たな身体へと移転され、以前は声だけであった彼女も今では擬人化が出来る存在になっている。

しかしまあ、擬人化は普通の魔導師でも見分けが付きにくいため、大樹は彼女を普通の人間の少女と見て疑わない。

恭也もそれを敢えて説明することもなく、魔導師であるということも黙ったまま現在に至っているというわけだった。

 

「それにしても……問題はどこからあの島に入るかだよなぁ」

 

「ふむ……定石で言うならばどこかの浜辺辺りが妥当だろうが――」

 

「お、あそこだな。じゃ、いっちょ行くとするか」

 

発言を最後まで聞かぬままにオールをこぎ始める大樹に恭也は何も言うことなく諦め気味な様子。

そもそもここで何か言ったところで彼が行動を止めるとは思えない。変なところで意地っ張りの頑固なのだ。

だから何も言わず彼の成すがままにする。それは同時に何かが起こっても自分らがどうにかすればいいという考え。

その際は結果的に自分たちの事が知れるだろうが、絶対に知れてはならないというわけでもないので良しとした。

しかし、そう思い至った途端――――

 

 

――彼らの乗る船は何かの衝撃を受け、彼らは衝撃で宙へと投げ出された。

 

 

驚く間もないほど突然の出来事。それ故に対処のしようがまるでなかった。

大樹はもちろんの事、恭也もリースも驚きが先立って飛翔魔法を行使するまでに頭が至らず、結果的に三人は海へと落ちる。

 

「あぷ、あぷ!」

 

「だ、大丈夫か、リース!」

 

海に行くことなどほとんどないリースは当然の如く泳げなどしない。

なのはやフェイト、シェリスと共に海に行ったときも妹のシェリスと仲良く砂の城を作って遊んでいたくらいなのだ。

故に海中ですぐに体勢を立て直した恭也は溺れるリースを慌てて抱き寄せ、肩に捕まらせる。

 

「けほっ、けほっ……うぇぇ、しょっぱい」

 

「そりゃまあ、海水だからなぁ……」

 

涙を浮かべながらの呟きに恭也と同じく体勢を立て直した大樹が意味もなく返してくる。

しかしそれにリースが何か言葉を返す事はなく、ただ海怖いとでも言うかのように恭也の上によじ登る。

そして完全に肩車な感じで登った彼女はそこでようやく安著を浮かべ、恭也の頭上に顎を乗せてまったりし始めた。

危機が去るとまったりする傾向は妹と同じ……こういったところは本当に姉妹なんだなぁと思ってしまうところである。

 

「ところで……どうするんだ? 船を起こして乗りなおすか?」

 

「いや、丁度いいから泳いでいこうぜ。そのほうが進入を悟られにくいだろ」

 

駄目元で聞いてはみたがやはり答えは予想通り……大樹はまだ大分ある距離を泳いでいくと言い始める。

そして有言実行というかのように泳ぎ始めたため、恭也も放っておけるわけもなく後へと続いて泳ぐ。

だけどそんな彼らを更なる試練が襲う。その予兆は、泳ぎ始めた彼らの目の前に浮かぶ波紋であった。

何かが宙から落ちた際に浮かぶであろうそれを見ると最初に思い浮かぶのは雨でも降ったのかという考え。

しかし、空は快晴と言える雲一つない天気。雨など降るとは誰にも到底思えず、ならば何だという疑問が再び浮かぶ。

だがそんな事が誰もの頭に浮かんだ瞬間、浮かんだ疑問は目の前で起きた現象にて解けることとなった。

 

「わ〜、竜巻だぁ……凄いね、恭也♪」

 

「ふむ、そうだな」

 

「って、んなこと暢気に言ってる場合か!!」

 

波紋が徐々に広がり大した時間も経たずして生まれた大きな竜巻。

それに恭也とリースは暢気な一言を呟き、その一言に突っ込みを入れながら大樹は反対方向に泳ぐ。

だが常識的に考えて竜巻の引き寄せる力に人間が敵うはずもなく、彼の健闘空しく三人は吸い寄せられる。

それにはさすがに今まで平然としていた恭也も僅かに慌て、未だ暢気に眺めているリースを頭上から下ろして抱える。

もう少し早く動けば飛翔魔法で逃げれたかもしれないが、ここまで近くなっては逃げてもおそらく巻き込まれる。

故に飛ばされても逸れないよう、被害が及ばないよう抱き込み、一番先頭にいてすでに巻き込まれた大樹も含めて障壁を張る。

 

 

――そして僅かな間を空け、彼らも竜巻へと巻き込まれる事となった。

 

 

さっき巻き込まれた大樹は身動きが無いところを見るとすでに気絶しているといことが分かる。

そして続けて巻き込まれた二人もすでに意識は危うくなってきていた。障壁を張ろうとも、渦巻かれる速さに耐えられるわけがないのだ。

だからこれはある意味仕方の無いこと……だけどそれでもリースを守るという思いが先立ち、どうにか意識を保とうとする。

しかし、彼の努力は空しく、大樹に続けて気を失ったリースに続き、彼の意識も闇の中へと落ちていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どのくらい時間が経ったかは分からない。気づけば、二人――恭也とリースは森の前の海岸にいた。

おそらく竜巻に巻き込まれた事によって打ち上げられただろう。だけど、そこに大樹の姿はなかった。

障壁を張っていったから打ち上げられても二人と同様に無事だろうが、姿を確認出来ないのは心配である。

しかし周りを探してもいないということは別の場所に打ち上げられたということ故、心配でも今はどうしようもない。

そのため二人は目的の人物をとりあえず探すため、身体の異常をチェックした後に歩き出した。

 

「しかし……また大変な事になったものだな」

 

「だね〜。ちょっと旅行気分でって感じだったのに、一気にテンションがダウンしちゃったよぉ」

 

がっくりと肩を落としながらも興味は周りの森に向けられているのか、キョロキョロと視線を動かしている。

そんな彼女に恭也は少しばかり苦笑を浮かべながらも、彼女がこけないよう抱き上げて肩車をしてやる。

するとリースは僅かにポカンとするも、すぐに楽しげな声を上げて担がれながらはしゃいでいた。

 

「っと……リース、あんまりはしゃぐと落ちるぞ?」

 

「平気平気! だって、落ちても恭也が助けてくれるもん♪」

 

楽しげに言う彼女に恭也も自然とまた笑みが浮かぶ。こういった所も姉妹そっくりであった。

普段はシェリスの前だからとお姉さんぶっているが彼女もまだ子供……誰かに甘えたくもある。

それを隠さず公に出来るのが今は恭也の前でだけ。彼だけが自分の甘えを許してくれる唯一の人。

そう思っているからこそ今も無邪気にはしゃぐ一面を隠すことなく彼の前に曝け出せているのだ。

 

「……ふえ?」

 

「ん……どうした?」

 

肩から伝わる振動がいきなり止まった事に恭也は足を止め、担いでいるリースへと目を向ける。

しかしリースの目は恭也とは交わらず、ただ真正面の一点のみへと向けられていた。

視線を向けても前を向いたまま、聞いても答えを返さない。それを不思議に思った恭也は正面へと視線を戻した。

 

「お姉ちゃ〜ん、やっぱり帰ろうよぉ。授業サボったら先生に怒られちゃうよぉ」

 

「今更何言ってるのよ。ニナだって、たまには授業をサボってピクニックでもしたいよね、なんて言ってたじゃん」

 

「た、確かに言ったけど、それは冗談で言っただけで……」

 

視線を先から聞こえてきた二名の声。そして視線を入ってきた瓜二つの容姿をした二人の少女。

違う部分と言えば、二人がしている髪留めと見た感じの二人の性格。それ以外は本当に同じであった。

そんな二人の少女は恭也とリースに気づいていないのか、何の警戒心も窺わせず近づいてくる。

 

《どうする? 見たところこの島の者に見えるが、大樹の事を聞いてみるか?》

 

《ん〜、まあ、このまま闇雲に探しても見つけるの難しそうだし、それもいいかもね》

 

彼女たちとの距離が狭まる中、恭也とリースはそう言い合い、決まると同時に二人に近づいていく。

さすがに近づけば気がつくのか、二人の少女は恭也とリースに目を向け、歩んでいた足を止める。

そして黒い髪留めをした少女が白い髪留めをしたほうの後ろへと隠れ、前に立つほうはなぜかフレンドリーな笑顔を向けてきた。

 

「こんにちは〜! こんな森の中に人がいるなんて珍しいけど、一体何してるの?」

 

「ああ、ちょっと人探しをしてたんだが、ちょうど良かった……君たちに聞きたいんだが――」

 

喋り方までフレンドリーな少女に気を悪くすることも無く、恭也は本題を切り出した。

切り出された話……探している人の特徴を伝え終えると、少女たちは互いに見合うと目を戻して首を横に振る。

それに恭也は僅かな落胆を表情に浮かべながらも礼を言って二人から去ろうとするとしたが、歩き出す前にリースが口を開いた。

 

「お姉さんたちってさ、この島の人なんでしょ? だったらさ、この近くに学園があるはずなんだけど、知らない?」

 

「知ってますけど……この島?」

 

「……あ」

 

慌てて口を塞ぐも時遅し。先ほどの発言に後ろに隠れるように立つ少女が反応してしまった。

それはこの状況下ではタブーな言葉。島の住人であるのならば、まずこの島の人なんていう言い方はしない。

そんな言い方をすれば自分たちは外部から来た人間とバレてしまう。だからこれはタブーであるのだ。

だが先ほどリースはそれを口にしてしまい、運悪く少女の一人にそこへ注目されてしまった。

前に立つ少女も最初は不思議そうにしてはいたが、何やら耳打ちをされると驚きを浮かべて目を向けたまま呆然とする。

 

「「「「…………」」」」 

 

そうして四人の間に沈黙が流れる。しかも恭也とリースの額には嫌な汗が出始めていた。

激しくヤバイ状況……なまじ島外からの人を歓迎しないのではと聞いているだけに、余計に危機感がある。

出来るならすぐにでも回れ右をして逃げ出したい。だが、それをしたら何となく悲鳴を上げられそうで怖い。

だから動くに動けず、相手も思考が停止状態であるためか、静寂のみの均衡状態が保たれていた。

しかしそんな静寂が四人を包む中、危機感を覚える彼らにとって好機とも言える現象が起きた。

 

 

『魔法学園関係者に伝達事項、島に侵入者あり。追っ手を振り切り現在も逃走中、魔法時間に限り学園生も捕獲への協力を許可する。侵入者は男女二人組。特徴は……』

 

 

島全体に響いているほどの声にも思えるそれは、明らかに普通とは異なっていた。

耳に聞こえてくるのではなく頭に直接響くようなもの。恭也やリースの知る言語で言うならば、念話と酷似している。

その声が聞こえてくると同時に地面から光の粒子が立ち上る。そしてその現象は目に見える範囲全てで起こっていた。

そんな現象が起こった故か、はたまた先ほどの連絡事項故か、どちらかは分からないが二人の注意が恭也たちから逸れる。

 

《逃げるぞ、リース!》

 

《アイアイサー!》

 

これを好機と取った恭也は念話で告げ、返事を返したリースはキュッと彼の頭に強く抱きつく。

頭に抱きつくのを感じた恭也はそれを合図にして瞬時に加速魔法を行使、彼女らの前から素早く逃げ出した。

そして彼らが去った後、ようやく逸らした意識を元に戻した少女二人は彼らの姿がないことに唖然とするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

三章はまだ公開してないけど、とりあえず出してみた。

【咲】 ネタバレもあるけど、三章が出てないから分からない部分も多いわよね。

確かにな。でもまあここで言うわけにもいかんから、分からない部分は各々で想像していただくしかない。

【咲】 言ったら三章を出す意味がないしねぇ。

うむ。まあそんなわけで今回の作品はマギウステイルとリリカルB.Nとのクロスだ。

【咲】 見方によったらトリプルクロスよね。

まあ、そうなるな。

【咲】 にしても、マギウスとリリカルってどっちも魔法が出るけど、魔法体系が違うわよね?

違うねぇ。リリカルは攻撃系の魔法が結構出るけど、マギウスはあまり出んからなぁ。

【咲】 それだとリリカルの魔法がマギウスで役に立つのかしら? マギウスでは戦闘ってほぼないわよね、確か?

原作では確かにほとんどないな。だけど、そこはB.N側、もしくはオリジナルでどうにかするさね。

【咲】 ふぅん。で、最後にだけど、B.N側からは他に誰か登場するわけ?

後々するだろうね。リリカルなのはって言ってるのに少なくともなのはが出なければ話にならんだろ。

【咲】 それって近々?

さあ、そこはどうだろうねぇ……じゃ、今回はこの辺にて!!

【咲】 また次回会いましょうね♪

では〜ノシ

 

 

 

 

 

 

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