『精霊の光と光翼人の翼によって気づかれたエンジュールは、この大地の裏側まで覆い尽くすほどの繁栄を遂げ、数々の建造物を遺しました。貴方方が今見ている都市、そして今いる場所も、その一つに過ぎないのです』

 

「世界に果てなんてないんだな? だけど、大地に裏があるのか?」

 

リエーテの言葉を聞けば、誰しもジャスティンと同じでそんな疑問が浮かぶ。

今目の前に映し出されている都市、そして今いるこのドム遺跡……全部が全部、エンジュールの時代の建造物。

そしてそれらを含めた全てが大地の裏側まで覆い尽くしている。この説明だと、大地にはまだ隠された地が存在することになる。

どんな冒険者も見つけ出すことが出来ず、公になることがなかった未開の地が、存在する事に繋がる。

だからそれを再確認するべく代表とばかりにジャスティンが問い、問いに対してリエーテは僅かな微笑を浮かべる。

 

『多くの問いを求む者よ。アレントは、遥か東……多くの答えを求めるのならば、いくつもの障壁を越え、アレントを目指しなさい。いかなる障壁も、精霊に祝福されし者を、遮ることなどできないのです』

 

それは世界の果てを越え、その先を目指せという彼女からの挑戦とも取れる。

故にかジャスティンはやる気と決意を漲らせて返事を返す。だが、フィーナは彼女の言葉を一般的な形で受け取った。

アレントへ辿り着くには様々な困難が付き纏う。世界の果てはあくまで、その一つに過ぎないのだと。

 

『精霊に祝福されし者、ジャスティン。アレントにいらっしゃい。世界に果てなど、存在しないのですから……』

 

様々な思いを抱く彼らにそう言い残して、彼女は映し出されたビジョンと共に姿を消した。

そして同時に再び彼らを光が包み、輝きを納めた次の瞬間には先ほどまでいた場所に三人は立っていた。

まるで夢でも見ていたかのような出来事。しかし、それが夢でなかったということぐらい皆もよく分かっている。

全ては現実……先ほど見た映像も、リエーテが告げた事実も、全てが疑うことなき事実に違いないのだ。

それを頭に思い浮かべながらフィーナは自分の頬に人差し指を当て、小首を傾げる。

 

「なんだかよく分からない話だったけど、要するに世界の果てには向こう側があって、そこにアレントもあるってことよね」

 

「ってことだよな。よーし! どうせ世界の果てにもアレントの後で挑戦するつもりだったんだし、順番が入れ代わったって構うもんか! まずは世界の果てへ向かおう!」

 

「わーい! 壁の上からアレントが見えるかもね!」

 

「ぷーぷー」

 

ジャスティンの言葉に賛同しながらはしゃぎだすスーとプーイ。

そんな二人と一匹を見てフィーナも知らず知らずの内に微笑を浮かべ、自身も小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GRANDIADifferentWorld Guardians

 

 

第五話 重なりゆく偶然、囚われし冒険者たち

 

 

 

 

 

 

 

 

――新大陸エレンシア・ドム遺跡前――

 

 

 

結論から言って、ドム遺跡を後にした彼らは一旦ニューパームへと戻ることにした。

というのも今の軽装備では世界の果てに挑むには心もとなく、戻って整えたほうがいいと考えたのだ。

そのため外へと出た彼らは森の中を元来た方向へと進み、森の出口を目指していた。

しかし、そんな一同の進む道にて思いもよらぬものを見つけ、歩く足を一旦止める事になった。

 

「なんだ、こいつ?」

 

「子供、ね……それにしても、酷い怪我」

 

道端に倒れる一人の少年。年の程はおそらくスーと同じくらいだろうか。

左右に大きく突き出した犬のような耳、額の真ん中から突き出した少し小さめの角。

見た感じからして普通の人間とは到底思えない容姿をしたその少年は、一言で言えばボロボロな格好だった。

服は酷く汚れ、カギ傷が出来ており、目に見える彼の肌は所々が深すぎず浅すぎない傷が多くついていた。

 

「た、大変! 早く手当てしないと」

 

「待って、スー。この子が負ってる傷、どうやっても今あるものじゃ手当て仕切れないわ。だからとりあえず応急処置だけして、私の家に連れて行ったほうがいいと思うの」

 

早々と救急セットを取り出そうとするスーを止め、フィーナは傷の具合を見てそう言う。

するとスーも彼女の言葉にわかったと頷き、ジャスティンのほうを見て彼を背負うように告げる。

ジャスティンとしても怪我人を見つけて放って置けるほど薄情では無い故、それに従って少年を背中に背負った。

 

「じゃあ、急ぎましょう。傷がいつ悪化するかも知れないから」

 

「だな」

 

少年をジャスティンが背負う代わりに彼の荷物をフィーナが持ち、短く告げてから歩き出す。

そうしてここに来るまでとは少しばかりゆっくりな歩調で、一同は森を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――新大陸エレンシア・フィーナ&リーンの家――

 

 

 

来たときよりは遅い歩調と言っても、一度通った道を戻るのはそんなに時間も掛からない。

それ故に一日を経て来た道も今回は半日で済み、日が沈み掛かったところで三人は家に辿り着いた。

家には当然の如く恭也がおり、三人の早い帰宅に僅かな驚きを浮かべるが、それより驚きを示すものがあった。

それはジャスティンの背負っている少年の存在。見た事もない身なりをして、多くの傷を身に刻んだ小さな少年。

どういった経緯でこの少年を拾ったのかが気にならないわけでもない。だが、それよりも先に優先することがある。

応急処置はしてあるといっても放っておけば危険な状態。そんな少年を他所に疑問を問いただすなど出来るわけもない。

そのため恭也はとりあえず少年をベッドに寝かせるよう指示し、急いで医療用具を準備して彼の手当てに入った。

 

「ふむ……応急処置をしっかりしたのが幸いか、傷はもう大した事はないな。だが、少しばかり熱が出始めているようだ……」

 

「そ、それって不味いんじゃないの? こんな傷を負ってるのに加えて、熱まで出ちゃったら――」

 

「傷は徐々に腐り始め、やがては死に至る……だろうな」

 

大怪我と言ってもいい傷を負っている段階で熱が出ればその結論は必然とも言える。

故にフィーナは焦りだすも、恭也は至って冷静に医療用具入れから粉の入った小さな小瓶を一つ取り出す。

続けて彼女に水を持ってくるように告げ、早々と台所から持ってきた水の入ったコップを彼女から受け取る。

そして小瓶から小さな紙に僅かな量だけ粉を取り出し、少年の口を少しだけ開けて粉と水を飲ませる。

 

「兄さん、それは……?」

 

「サルファ草を煎じた薬だ。急激な発熱を抑える効力があるから、こういった場合に役に立つ……まあ、この時期でサルファ草自体取れないから希少な薬なんだが、取っておいて正解だったな」

 

「じゃあ、この子はもう大丈夫なの?」

 

「ああ。発熱さえ抑えれば傷が腐ることもない……山は越えたと考えてもいいだろうな」

 

少年を一撫でしながら告げられた一言に誰もが安著するような小さく息をついた。

そんな皆の様子を見て恭也は苦笑しつつ、桶の水に浸して絞ったタオルを畳み、少年の額に置く。

 

「後は俺が見てるから、お前たちはもう休むといい。旅から帰ったばかりで疲れてるだろう?」

 

「だ、大丈夫よ。あの程度で疲れるほど柔な鍛え方は――」

 

「そんな疲労困憊な顔して何を言ってるんだ、この愚妹が。それにお前は大丈夫でも、そっちの二人はキツそうだぞ?」

 

そこでフィーナは気づき、後ろにいるジャスティンとスーに目を向ける。

フィーナも疲れてはいるが、彼らからしたら結構限界が近いのか、すでに頭がコックリと揺れていた。

それはもう立ったまま寝てしまいそうな勢いなのと同時に、二人の疲労度を表していることでもあった。

二人のそんな様子を見ると彼女としてもこれ以上反論も出来ず、恭也の言葉に分かったと頷いて床へと付くことにした。

 

「じゃあ兄さん……悪いんだけど、お願いするわね」

 

「ああ、任された」

 

眠そうにする二人を連れて少し離れた位置に移動し、身を横たえる。

そして僅かな間を空けて小さな寝息を立て始める。その様子から、やはり疲れてはいたのだと見て取れた。

なのに自分も起きていようとしたのは、おそらく兄である恭也に頼りっぱなしではいけないと思ったからだろう。

それが分かるからこそ恭也は今一度苦笑を浮かべ、目の前の少年の感情に専念するのだった。

 

 

 

 

 

三人が床につき、少年の容態も安定したのを確認した恭也は外へと出た。

別段どこかに行く用事があるわけではない。ただ、気まぐれに外の空気を吸いたくなったのだ。

数日振りに妹たちも帰ってきて、挙句一つの問題を土産にされて、少しばかり恭也も疲れていた。

それは体力的にではなく、精神的にだ。嫌に偶然が重なるなと思った矢先に、フィーナたちがあんな少年を連れ帰ったのだから。

 

「どう見ても、あれは亜人の子供だな。となると、あの子が軍に追われている……」

 

亜人にこれといって詳しいわけじゃない。だが、世間で知れる程度だけの概要は知ってもいる。

加えてドム遺跡方面に逃げ込んだという情報もある。これらを結びつけると、結論はそれしか浮かばなかった。

そしてこの結論は次なる問題へと結びつくため、知らぬ内に溜息すらもついてしまう。

 

「まったく、次から次へと……厄介事のオンパレードだな、ここ最近は」

 

少し前まで退屈と思えるほど平穏だったのに、先日フィーナが帰ってきてからは山のような厄介事。

退屈でも平穏を満喫していた恭也としても、精神的に疲れてしまうのはしょうがないことだと言える。

その極めつけ亜人の子供を連れ帰るという事態……これが見つかれば、軍も黙ってはいないだろう。

いや、もし連れ帰るところを見られていたのならすでに遅い。早急に手立てを打たなければ、少年諸共捕まる可能性がある。

 

「さて、どうしたものか……」

 

出来るならそれは避けたいところだが、今全員を連れて逃げてもおそらくは無駄だろう。

恭也だけならまだしも、他の面子も守りながら逃げるのは簡単なことではない。

だから今更逃げるという手を取っても遅い。しかし、だとすればどうすれば上手くこの状況を脱せるかが問題だった。

 

「…………ん?」

 

そんな問題を考えている最中、山脈の方面から二人ほどの人影が近づいてくるのが見えた。

夜も更けている故に向こうは気づいていない。だから、とりあえず見つからぬように近くの岩場に隠れた。

すると都合のいい事にその二人は恭也の隠れる岩場の反対側にて足を止めた。

 

「んじゃ、俺はこの辺を探すことにするわ。お前は軍用犬を連れて少し離れた所を探してくれ」

 

「了解。じゃあ、三十分後くらいにまたここで集合ってことで……」

 

短くそれだけ話し合い、軍人と思わしき男性の一人は軍用犬である犬を連れて離れていった。

片割れが離れたのを見て行動を起こす前に一休憩入れるためか、もう片方は依然として岩場から離れない。

それ故に恭也も岩場の影から出る事もなく、先ほどの軍人同士の話を聞いて思考する。

 

(軍用犬まで使ってくるか……軍も本気だな。さて、こうなると見つかるのは時間の問題……どうするか)

 

軍用犬は何かを捜索する際には非常に優れている故、使われたら見つかるのは必然。

とすれば見つかるのは時間の問題となってくるため、それが恭也に考えることを強要する。

無駄と分かっても逃げるのか、それとも何か他に別の手があるか……気配を消して息を潜めつつ、それを思考する。

そしてそれを考え続けること僅か一分弱が経ち、そこで彼は逃げる以外での一つの手を考え付いた。

 

(むぅ、これもそれなりに危険を伴う方法だが……まあ、逃げて捕まるよりはまだマシか。それに、俺自身に利点がないわけでもないしな)

 

内心でそう呟いて自身を納得させ、有言実行とばかりに即行動へと出た。

未だ岩場の反対側に佇んでいる軍人に気配を消したまま近づき、すぐさま背後を取る。

そして相手がその際の足音に気づき、振り向くよりも早く首筋に手刀を落とし、意識を刈り取った。

意識を失ってぐったりと倒れこむ軍人を引きずり、元いた岩場の裏へと移動すると恭也は軍人の服を脱がし始める。

 

「よし……あとは口を塞いで、鋼糸で縛っておけばいいな」

 

脱がした軍人の服をすぐさま身に纏い、ハンカチで口を塞いで鋼糸で彼の身体を縛る。

そして彼の被っていた帽子を被り、ついでに眼鏡をかけている男性だったため、それを奪って身につける。

後は特定の軍人がつけているものであるマスクを奪い、同じく身につけてから身なりを確認する。

 

「むぅ……一応は大丈夫だと思うが」

 

マスクに加えて偶然とはいえ、眼鏡を掛けている軍人。それを全て奪った上での変装は中々にバレにくいだろう。

問題となってくるのは声だろうが、そこもどうにかして誤魔化せばいい。そう考え、恭也は問題なしと判断する。

そうしてしばらく時間が経ち、軍用犬を連れたもう片割れが戻ってきたのを見てゆっくりと歩み寄る。

 

「どうだった?」

 

「おう、バッチリ見つけたぜ。さすが軍用犬だな、匂いを辿って一発で見つけやがった」

 

「そうか……」

 

「なんだ、テンションの低い奴だな……ていうか、その声どうしたんだよ。さっきと違って妙に低いが……」

 

「あ、ああ、ちょっと風に当たりすぎてな……風邪を引いてしまったみたいなんだ」

 

「風邪って……軍人のくせに身体の弱い奴だな。そんなんじゃ隊長たちの扱きについていけねえぞ?」

 

笑いながらも咄嗟についた嘘を信じたのか、男性は冗談めかしに告げた。

それに愛想笑いを返しながらも、軍人がこんなので大丈夫なのかと内心で恭也は思っていたりする。

加えて先ほどから綱を握られて大人しくお座りしている軍用犬にも同じことが言えた。

優秀なはずなのに人が入れ代わって唸りの一つもしない。これでは本当に優秀かどうかすらも疑わしかった。

 

「ま、冗談をともかくとして、とりあえず戻ろうぜ。目的の亜人を見つけたことをさっさと報告しねえと」

 

笑いを納めて言ってくる男に恭也も頷き、二人はその場からゆっくりと離れていく。

岩場の裏にて意識を失ったまま縛られている本来の片割れたる軍人の男を残したまま。

 

 

 

 

 

一夜が明け、鳥が囀る音にて三人は揃い目を覚ました。

そして目を覚ますと同時に驚きを浮かべる。昨日までベッドにいた少年の姿が、そこにない事に。

それどころか看病していた恭也すらもいない……これには驚くなというほうが無理な話である。

一体少年と恭也はどこにいったのか。それを慌てながらも冷静に考え、一同は行き先の検討をつけようとした。

だが検討がつくよりも早く、思考する一同の耳に突如として笛の音が静かに聞こえてくる。

 

「これ……外から、よね?」

 

「みたいだな……とりあえず、出てみよう」

 

ジャスティンの言葉に二人は頷き、揃って笛の音が響く外へと出る。

すると家から出た少し先のほう、草原の真っ只中にて例の少年がただ一人佇んでいた。

笛の音の発生源はこの少年から……それ故に彼らは邪魔をしないようにゆっくりと彼へと歩み寄る。

足音を忍ばせて近づいたのが幸いしてか、少年は気づかずに手に持つオカリナに口をつけて吹き続ける。

そうしてしばらく近場で彼らは笛の音色を堪能する中、曲に区切りがついた段階で少年はようやく彼らに気づいた。

 

「&%$#?」

 

少し怯えたように振り向く少年だったが、彼らの姿を確認すると途端に笑みを浮かべる。

どうやら自分を助けてくれた人だと分かっているらしく、警戒心は露ほども感じていないのだろう。

その笑みからそう思われていることが読み取れ、彼らも釣られるように笑みを浮かべた。

 

「ほら、病み上がりなんだからあまり無理しちゃ駄目よ。家に戻りましょう?」

 

「&#$%&%$%$?」

 

「……えっと」

 

怪我もまだ治りきっていないのだから無理は禁物。だから家に戻るよう告げた。

だけどそれに対しての返答がこれまた解読不能の言語。一体何を言いたいのかさっぱり分からない。

さっぱり分からないからこそ返答にも困り、黙るしかなくなって少年すらも困ってしまうという悪循環になる。

だが、黙ってしまう一同に対して少し困った様子を見せる少年だったが、程なくして懐から三つの木の実を取り出した。

そして三人へと近づいて取り出した木の実を差し出し、ニッコリとした満面の笑みを浮かべる。

 

「これをくれるってことかしら?」

 

「じゃないかな? でも、一体これ、なんて木の実なんだ?」

 

当然の疑問を口にするも、それに答えられるわけもなく二人は首を横に振る。

しかしこんな少年がおかしなものをくれるとは思えず、疑問はありながらも三人は木の実を受け取ろうと手を伸ばす。

 

 

――だが、その行動は突如聞こえてきた力強いエンジン音にて中断させられた。

 

 

音がした瞬間に少年は手に持っていた木の実を懐に仕舞いこみ、キョロキョロとしだす。

そして音がしない方向へ逃げようとしたのだろうか、音がしてくるのとは反対方向へと駆け出そうとした。

しかしその行動すらも逃げようとした方向から駆けてくる人影によって止まり、程なくして彼らは囲まれた。

凄まじいエンジン音を響かせる戦車が三台、そして何人いるかも分からないほど多い軍服の男たち。

それらによって囲まれた三人が事情も分からず酷く慌てだす中、軍人の群れの中から三人の女性が前へと出た。

前に出たその女性たちにジャスティンとスーは見覚えがあった。この大陸に来る前、サルト遺跡にて遭遇した三人の女性。

名前は右から、ナナ、サキ、ミオと言っただろうか。遺跡では酷く意地悪をされたので嫌というほど記憶に残っていた。

 

「ようやく見つけたわよ。ケモノのくせに、ずいぶんと手間取らせてくれたじゃない」

 

そんな三人の内の一人、紫色の長髪をした女性――ナナは少年を睨みつけながらそう呟く。

その視線に対して少年が怯えを見せる中、少年を庇うようにしてジャスティンたちは前へと出る。

前へと出た彼らに今度は眼鏡を掛けた緑色のセミロングの女性――ミオが睨みを放ち、静かに告げる。

 

「……余分な因子が増えているようですわね。貴方たち、おとなしくそのケモノを引き渡しなさいな。抵抗すると、碌なことはございませんことよ」

 

「やなこった! こんな小さな子供によってたかるお前たちなんかの言う事なんて聞けるかよ!」

 

「威勢だけはいいみたいだけどよ……そのケモノは軍事機密に関わる重要な奴なんだよ。そんなのに関わってただで済むわきゃねえんだ……悪いことは言わねえからさっさとそいつを置いて帰れっての!」

 

橙色の短髪をした女性――サキはそう口にするが、それにナナが天を仰ぎだす。

そして視線を戻したときには可笑しそうな笑みを浮かべ、僅かに笑いながらサキへと言った。

 

「やーねーサキ。このケモノが軍事機密だってことも軍事機密なんだから、口にしたら駄目よ」

 

それに対してサキはまじいまじいと頭を掻く仕草を見せるが、深刻そうにはとても見えなかった。

同じくミオもナナも深刻な顔は一切浮かべず、冷酷な笑みを浮かべて静かに言う。

 

「軍事機密を知られたからには、一緒に来てもらうわ。こっちとしては抵抗してくれたほうがこの場で射殺できるから面白いんだけど……どう? 試してみる? スパイは死刑だから、遅いか早いかの違いでしかないわよ?」

 

「そっちが勝手にバラしたんじゃねえか!!」

 

「おーっほっほっほ! そんなこと関係ないわ! 軍事機密は絶対なのよ!」

 

流れ的には激しく滅茶苦茶だと言える。だけど、軍事機密が知られてはいけないものなのは事実。

それ故に他の兵士はナナたちの言葉に従い、亜人を含めたジャスティンたち四人を拘束しに入った。

隙をついて逃げ出そうとも考えはしたが、銃を突きつけられている故に下手な行動を取ることが出来ない。

そして結果として彼らは大人しく捕まる羽目となり、軍人に連れられる形でその場を後にしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

【咲】 珍しく早い更新ね。

ふむ、今まで更新出来なかった分を巻き返そうと頑張ったからな。

【咲】 毎回このくらいの勢いなら私も文句は言わないんだけどねぇ。

それは無理な話だな。

【咲】 …………はぁ。

ま、まあそんなわけで! 今回の話にてジャスティンらが軍に捕まったな。

【咲】 そうねぇ。加えて恭也も軍人に扮装して紛れ込んで……一体何を考えてるのかしら?

もちろん、危険度の極力少ない解決方法を考えてるのだよ。

【咲】 逃げて捕まるのと同じくらい危険度高いような気がするけど?

ま、こちらも危険なのはそうだけど、恭也としてはこっちのほうが危険度少なくて済むと判断したのだよ。

【咲】 ふ〜ん……ま、それが功を奏すかどうかは今後次第ね。

そういうことだな。てなわけで今回軍に捕まったジャスティンらだが、次回からは!!

【咲】 基地からの脱出編ね?

うむ! そこにてまあいろいろとあるわけだが、それはもちろん次回のお楽しみ♪

【咲】 相も変わらずいつも通りな言葉ねぇ。

そう言うなって。じゃ、今回はこの辺にて!!

【咲】 また次回会いましょうね♪

では〜ノシ

 

 

 

 

 

 

感想は掲示板かメールにて。

 

 

 

 

 

 

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