リーンとフィーナと出会い、二人の家に住むようになってから早一年。

当時負っていた怪我も完治した恭也は、住むようになってから一年とは思えないほど馴染んでいた。

その姿は歳の離れた兄と妹たちのようにも見え、時には二人の娘と暮らす父親のようにも見えるくらい。

加えて近場の街であるニューパームにも買い物でよく行くためか、顔馴染みの人間も多く出来た。

要するにはこの世界ので生活にある程度慣れたという事。だけど、元の世界に帰るのを諦めたわけではない。

二人と生活をする中で街での情報収集は毎日のように。更には時折だが、手掛かりを掴みに少し遠出したりもする。

だけど一年間それを繰り返しても全く成果は無い。だが、その結果もある意味では当然であるのかもしれない。

簡単の見つかるのなら元の世界への帰還方法を探索するのに一年も掛からない。だから、言ってしまえばそれは仕方ない事だ。

 

「だからと言って、諦めるつもりはないがな……」

 

仕方ないと思った自分に対して誰に言うでもなく、自分自身に言い聞かせるように彼は呟く。

そして昨日と同じく晴れ渡った空を軽く見上げつつ、今日の成果を手に持ってゆっくりと歩き出した。

ここで勘違いの無いように言っておくと、今日の成果というのは別に方法の探索成果ではない。

ならば何かと言えば答えは簡単……彼が情報収集と同じように毎日行っている、狩りの成果だ。

基本的にニューパームの街で売っているのは野菜か、既に捌いて干してある携帯用の肉ばかり。

たまにそうではない肉も仕入れている事は仕入れているのだが、本当に頻度が低い上に店に並んでもすぐ無くなる。

冒険者協会がある街だと言うのにそんな始末……恭也としては若干、冒険者たちの事をだらしないなと思わなくも無い。

だが愚痴った所で意味があるわけではない。それ故、それなりに腕もあるためか肉類の調達は基本的に現地という事にしていた。

 

「クエクエ鳥が一羽と、ツチノコブラが二匹か……実質的に成果と言えるのは鳥だけだな。二人とも、蛇の方は食わんのだし」

 

ほとんど毎日のように狩りをしているためか、最近では恭也に襲い掛かってくる魔物が少ない。

加えてリーンもフィーナも蛇を料理に出すと嫌な顔をするため、得物となる魔物はクエクエ鳥くらい。

少し遠出すればクエクエ鳥以外の鳥も入手出来るのだが、そうすると少し帰りが遅くなるので頻繁には出来ない。

だから基本は近場となるメリル山道での狩り。そしてこれまた基本的に手に入るのはそれくらいなもの。

更には先も言った通り襲い掛かってくる魔物の減少により、取れたとしても日に一羽か二羽程度なものであった。

 

「また、フィーナに文句でも言われそうだな……」

 

ツチノコブラを放置してクエクエ鳥のみを担ぎ、歩きながら彼は呟く。

だけど言葉と違って表情に浮かぶのは僅かな笑み。それは表情の変化が余り無いと言われる彼には珍しい。

だが、そんな笑みが自然と浮かぶという事は、それほどリーンやフィーナのいる日常が普通となってきている証拠。

彼自身がそれに気づいているかいないかは分からない。でも、少なくとも嫌な思いはしていないというのは分かる。

そうして彼はそんな笑みを僅かに浮かべつつ、クエクエ鳥を担ぎ直して歩き続ける――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――血の繋がりは無くも、家族のように思える少女たちの元へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GRANDIADifferentWorld Guardians

 

 

番外編1 彼女が笑ってくれるのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この鳥さんもう嫌!」

 

帰宅した恭也が差し出した獲物を見た矢先、フィーナは真っ先に拒否を示した。

だが、それも無理は無いだろう。ここ最近では肉類と言えばほぼ鳥、しかも決まってクエクエ鳥。

この近辺ではこの鳥しか捕まらないのだから仕方ないと言えばそうだが、それで納得するほどフィーナは大人じゃなかった。

 

「あんまり我侭言っちゃ駄目よ、フィーナ。恭也兄さんだって好きでこればかり取ってきてるわけじゃないんだから」

 

「い~や~! たまには違う鳥さんが食べたい~!」

 

我侭を言うフィーナを嗜めるのは基本的に姉であるリーンの仕事。

しかし、時折彼女の我侭はリーンですら手に負えないときがある。今の状況が正にそれだ。

だからと言って彼女にはフィーナを怒鳴るという行為が出来ない。なぜなら、彼女は妹に甘いから。

それはフィーナを妹のように扱うようになった恭也も同じ。だから結局、二人は彼女の我侭を叱れないのだ。

そしてだからこそ、フィーナを宥める方法が見つからぬ故に彼女がこうなると困ってしまうしかなかった。

 

「違う鳥と言うが……具体的にはどんな鳥が食べたいんだ?」

 

「美味しい鳥さん!!」

 

「そ、そうじゃなくて、恭也兄さんはどんな形の鳥さんが食べたいのかって聞いてるのよ、フィーナ?」

 

「どんな形……んっと、ちょっと待っててね!」

 

そう言うとフィーナは本棚のほうへと駆け出し、そこの前で足を止めると徐に漁り出した。

そして漁り出してから一、二分後、漁った中から一冊の手に取り、今度はパラパラと捲り始める。

捲り始めてから少ししてページをある場所で止めるとそのまま持ち、二人の元へと戻って見せてきた。

 

「この鳥さんが食べてみたい!!」

 

「ふむ……」

 

差し出してきた本の開かれたページを二人して覗くとそこには一匹の鳥……というか魔物の姿が描かれていた。

その下には『不思議鳥』という言葉が表記されている。おそらくこれが、描かれている魔物の名前なのだろう。

この魔物に関しては恭也も見た事があるし、遠出したときに戦った事もある。だから、取るのは特に難しくない。

だけどどうしても一つだけ問題が発生する。それは、この魔物の生息地なる場所がこの付近ではないという事。

基本的に恭也が狩りに行っている場所はメリル山道。しかし一番近い不思議鳥の生息地は真逆の方向をしばし進んだラングル山脈。

行った事がないわけではないが、遠いが故に余り行かない場所。しかも、行けば帰るまでそれなりに時間が掛かる。

更に言えば、行っても不思議鳥を取ってこれるという保証も無いため、運が悪ければ無駄足という可能性も否定できない。

しかし、そんな可能性があっても恭也は諦めろとは言えない。妹のような存在の少女から、期待で一杯の視線を向けられては。

 

「不思議鳥、だな……分かった、何とかして取ってこよう」

 

「ほんと!?」

 

「ああ、ほんとだ。だが、場所が遠いから今から行くと帰るまでに夕飯の時間を過ぎてしまう……だから、この鳥は明日必ず取ってくるから、今日はこれで我慢してくれないか?」

 

「そういう事ならフィーナ、我慢する!」

 

要するにフィーナの望みはクエクエ鳥とは違う鳥を食べたいだけ。食べられるなら、今日だろうが明日だろうが構わない。

屈託の無い笑顔と共に放たれた一言でそこを察する事ができ、姉であるリーンは僅かながら溜息をつかざるを得なかった。

反対に恭也は呆れこそある程度あるも彼女の笑顔に釣られて若干の笑みを口元に浮かべ、いい子だと頭を撫でつつ褒める。

それにくすぐったそうな仕草を見せつつも、フィーナは笑みを絶やさない。それに今度はリーンも釣られて笑みを浮かべた。

そうして、そんな三人の築き上げた和やかな時間は恭也が夕食の支度に取り掛かるときまで、続くこととなった。

 

 

 

 

 

翌日、恭也は昨日告げた通り、不思議鳥を狩りにラングル山脈へと足を運んでいた。

見渡す限りあるのは広い草原、周りを囲むようにその先にある山々。鳥類の魔物が飛び交うには絶好の場所。

だけどそんな場所に足を運んだ恭也に、一つだけ些細とは言えない問題が発生していた。それは――――

 

 

 

「わぁ~……凄くいい眺めだね、お兄ちゃん♪」

 

――不思議鳥を所望した本人たるフィーナが、付いてきてしまったという事。

 

 

 

狩に出る前、突如として付いていくと言い出した彼女。その理由は、生きている不思議鳥を見たいというもの。

実際、恭也が持ち帰るのは狩った後のものであるため、獲物は大概死んでいるという場合が多い。

不思議鳥に関してもそれと同じであろうという事が言え、生きている状態を見たいフィーナは付いていくと言い出したのだ。

無論、これには恭也もリーンも大反対。まだ十一歳になったばかりの女の子には、魔物などあまりにも危険すぎる。

下手をすれば怪我などでは済まない……だから、二人とも断固反対をし、駄々を捏ねる彼女を説得しようとした。

だが、不思議鳥を食べたいと言ったとき同様、彼女は説得を聞かなかった。聞くどころか、絶対行くと騒ぎ出す始末。

元気がよくて人見知りしないが、こうと決めたら頑固な女の子。それも彼女の利点であると言えると共に、難点であると言えた。

そして先も言ったとおり彼女は一度こうなると本当に頑なになる。それ故、いくら説得しても絶対に首を縦に振らないのだ。

だから結局、この件も危ない事をしないで大人しくしているという事を条件として恭也とリーンの二人のほうが折れる羽目となったというわけだ。

 

「ほら、フィーナ……どこから魔物が襲ってくるかもしれないんだから、余り離れては駄目だぞ」

 

「うん! それでお兄ちゃん、本に載ってた鳥さんはどこにいるの?」

 

「ふむ……あの図鑑によると、この山脈の周辺の空を飛びまわっているらしいんだが」

 

フィーナが見せてきたのは以前、ニューパームの雑貨屋で購入したこの大陸に生息する魔物限定の図鑑。

この大陸に付いたばかりの冒険者が困らぬよう、冒険者協会から雑貨屋に提供される商品の一つ。

これをたまたま雑貨屋に用事があってやってきた三人が見つけ、その中でフィーナが特にこれを欲しがった。

図鑑といってもそれなりに値が張るのだが、このときもフィーナの頑固さが発揮されて結局買わされた。

そんな彼女の宝物とも言える図鑑によれば、不思議鳥の生息地はラングル山脈。その空を基本的に飛びまわっているらしい。

だが、個体数が他のものと比べるとそれなりに少ないため、群れはおろか一羽や二羽でも見つけるのは困難。

それ故にどこにいるのと聞かれても目に見える範囲にはおらぬため、答えられずに頬を掻くしかなかった。

 

「……少し歩き回ってみるか。見る限り空を飛んでいるようには見えないから、もしかしたらその辺の木にとまってるのかもしれんし」

 

恭也がそう言うとフィーナは元気よく頷き、彼の手を取って引っ張るように前へと歩き出した。

彼も苦笑しながらなるべく彼女から離れぬよう手を繋いだまま再び隣へと移動し、周辺の木々を回り出す。

基本的に山々で囲まれた広大な平原、それがラングル山脈という場所。だが、いくら平原でも木の一本や二本くらいある。

そして今探してる不思議鳥は魔物とはいえ鳥。空を飛んでいないとすると近くの木にでもとまっている可能性がある。

すぐに見つかるとは思っていないが、そういう可能性も考慮して探索したほうが発見率もそれなりに上がるだろう。

 

「あ、お兄ちゃん! あそこに木に鳥さんがとまってるよ!」

 

「あれは……ここから見る限り、残念だが不思議鳥じゃないな」

 

「そうなの? じゃあ、何て名前の鳥さん?」

 

「名前は分からんが……図鑑にも載っていなかった種類だから、おそらく魔物じゃなく普通の鳥なんだろう。普通の鳥がいるのはこの辺りじゃ珍しいんだがな」

 

世の中には魔物だけではなく当然、鳥など普通の動物に分類される生き物も数多くいる。

恭也自身、新大陸エレンシアの極限られた場所にしか行かないため、目にするのも魔物の方が多い。

だから普通の鳥というものを見つけるのは久しぶり。だからか、少しばかり木にとまっている鳥に見入っていた。

そんな彼に対して同じく見入っていたフィーナはその鳥から視線を恭也にずらすと握った手を引っ張った。

 

「あの鳥さんは食べられないの、お兄ちゃん?」

 

「食べられない事はないが……あれくらい小さい鳥だと食べられる箇所も少ないぞ?」

 

「少ないの?」

 

「ああ、少ないだろうな。もっとも、食べられない骨などの部分はスープを作るのに使えるが、小さいから大した出汁は取れないだろうなぁ」

 

「そうなんだ……あ、逃げちゃった」

 

視線の先にいた鳥はフィーナの言ったとおり、木から飛び立って空の上へと上がり、遠くへと去っていった。

食べられないと分かってもなぜかフィーナは名残惜しそうに見送るも、すぐに笑顔に戻って恭也の手を引っ張り始める。

それに恭也も彼女の成すがままに歩き出し、別の木々を見回りながら平原を歩き続ける。

 

「見つからないね、鳥さん……」

 

「まあ、そう簡単に見つかるとは思っていなかったんだが、これは少し長丁場に――……ん?」

 

言葉を言い切る前に目先にあるものを見つけ、恭也はふと足を止める。

手によって繋がれているフィーナもそれに合わせて止まる事となり、どうしたんだろうと恭也に視線を向けた。

だが、恭也に視線はそちらには向けられず、前方のある一点にのみ彼の目は向けられていた。

自分のほうを向いてくれない恭也にフィーナは首を傾げつつ、一体何を見ているのか気になって彼の視線を辿った。

すると彼が向けていた視線の先には一本の木があった。だが、実際に視線が向けられているのはその木ではない。

正確にはその木に止まっている一羽の鳥。少し大き目な身体に鋭い嘴……何より、身体よりも大きいのではと思えるほどの足が特徴の鳥。

その外見は全て図鑑に載っていた不思議鳥の姿を酷似していた。それ故か、恭也に確かめもせずフィーナは嬉しげにそれへと駆け出してしまう。

あれほど注意したのにそんな危ない行動。そうでなくとも、不思議鳥は厳密に言えば鳥ではなく、獰猛であると言える魔物だ。

そのため、捕まえるにしても彼女は少し離れなくては危ないはずだった。なのに、最初の注意も忘れて見つけた喜びのまま近寄っていってしまった。

これには不思議鳥はあっさり見つかった事で呆然としていた恭也も我に返り、すぐさまフィーナを止めるために動き出そうとする。

だけど、恭也が動き出すよりも僅かに早く不思議鳥のほうが飛び立ち、大きな鳴き声を上げつつフィーナへと迫った。

 

「――きゃっ!?」

 

鋭い嘴で彼女を串刺しにしようと迫るも、いきなりの接近によって後ろへ仰け反り、その勢いのまま扱けてしまった事でギリギリ難を逃れた。

だが、意図していなくても避けられたと認識した不思議鳥は怒りを露わにし、空中で反転して尻もちをついた状態の彼女へと再度襲いかかる。

嬉しさから一転して不思議鳥に対する恐怖が湧き、その状態のまま動けなくなってしまったフィーナは嘴の脅威から逃げる事が出来ない。

それ故、来るであろう痛みの前に両手で頭を抱えつつ地面に伏せる。しかし、嘴が齎す脅威はフィーナに届く事はなかった。

 

「ふっ!!」

 

「!!?」

 

二度目の攻撃がフィーナに届くよりも早く恭也がその前に立ちはだかり、腰に差している二刀の小太刀の内の一刀を抜刀する。

抜刀からの斬撃は不思議鳥が緊急回避に出た故、胴体に軽く斬る程度で終わる。だけど、彼はそのまま逃げる事を許さない。

 

「人の妹に手を出した事……万死に値する」

 

血の繋がりも何もない義理の妹ではあるが、妹という存在そのものに甘い恭也の兄馬鹿全開な発言。

そんな言葉を口にすると同時に鋼糸を飛ばし、素早い動きの不思議鳥の足を見事に絡め取る。

それによって不思議鳥は態勢を僅かに乱れさせ、バサバサと翼を羽ばたかせる事で鋼糸による拘束から逃れようとする。

だが、鋼糸はしっかりと足に絡みついているために解けず、それが不思議鳥に焦りのような感情を抱かせる。

故に動きも忙しなくなりつつある中、次の行動とばかりに恭也は強めに鋼糸を引き、更に体勢を崩させると同時に飛針を二本投げる。

体勢が崩された上での飛針なため、如何に素早い動きの不思議鳥でも逃れられず、飛針は狙い通り両方の翼へと一本ずつ突き刺さった。

これにより不思議鳥は痛みからの鳴き声を上げ、地面へとドサリと落ちる。だけどそれでも逃れようと、再び飛び立つ試みを見せる。

しかしこのチャンスを恭也が逃すわけもなく、すぐさま不思議鳥との距離を詰め、右手に持つ小太刀で不思議鳥を一突き、絶命へと追い込んだ。

動かなくなった不思議鳥の亡骸を彼は足に絡めた鋼糸で更にぐるぐる巻きにし、狩りをした感バリバリの担ぎ方で担いでフィーナの傍へと戻った。

 

「大丈夫か、フィーナ?」

 

「……(フルフル)」

 

俯いていた頭を上げてもう大丈夫だと確認するも、恭也の問いに対して首を振る事で返した。

魔物が齎す恐怖というのを初めて体験した故だろう……表情も今までと違い、どこか泣きそうな表情を彼に向けていた。

そのため恭也も注意を無視した事に関する咎めは一切せず、もう大丈夫だと彼女の頭を優しく撫で続けた。

それによってようやく落ち着きを取り戻すかに見えた。だが、ここで恭也は一つミスを犯した……不思議鳥の亡骸を担いだまま、近づいたというミスを。

 

「っ――ふええええぇぇぇん!!」

 

「な……ど、どうしたんだ、フィーナ? どこか怪我でも……って、これが原因か!? だ、大丈夫だぞ……ほら、もう動いたりしないから、な?」

 

ここで二度目のミス。死んでいるとはいえ不思議鳥を見て泣いているのに、それを更に近づけるのは大失態。

それ故にフィーナの泣き声は益々大きくなり、それに更に慌てる恭也は何とか泣きやませようと様々な方法で宥める。

だが、どの方法も上手くいく事はなく、結果としてフィーナが泣きやむまで少々の時間を要する事となった。

 

 

 

 

 

泣きやませる前に若干の時間は掛ったものの、狩り事態は早く終わった故に二人の帰宅は早かった。

遅くなるだろうと踏んでいたリーンは獲れずに諦めたのかなと思いもしたが、出迎えた際に見た狩りの成果を見て少しだけ驚いた。

そしてそれから一時間後、待ちに待った不思議鳥の調理タイム。調理するのはもちろん恭也、その助手としてリーン。

普段はフィーナも手伝うのだが、手伝うと摘み食いしたくなるからと辞退。それ故、調理はこの二人により行われた。

まず不思議鳥の首を落として血を抜き、毛を抜く作業。これはリーンには出来ないため、恭也がそれを行った。

そこから続けて調理……足と内臓を取り除き、肉のみとなったそれを鍋の中にぶち込んで焚き、時間を掛けて出汁を取る。

 

「野菜を切ってしまうから、鍋を見ててくれるか?」

 

「分かりました」

 

リーンが切ってもいいのだが、手際を考えると断然恭也。そのため、指示に従って彼女は鍋を見る事にした。

その間で恭也はニューパームの市場で買ってきた野菜を刻み、大して時間も掛けずにリーンと交代する。

交代したリーンは刻まれた野菜を数種類使ってサラダを盛る作業へと移り、これもそんなに時間も掛からず終わる。

そこから更に出汁を取りつつ数時間後……ようやく出汁も取れたと判断した恭也は鶏肉を鍋から取り除き、野菜を入れて煮詰める。

そして煮詰めている鍋の様子を再びリーンに見させ、鍋から取った鶏肉を今度は味付けをしつつ炒め、別の料理として仕上げた。

ここから後は鍋の中身を煮詰めるだけとなり、二人とも完成までしばし待つこと数十分後――――

 

 

 

「「「いただきます(!!)」」」

 

――完成がちょうど夕食時の時間となり、出来た料理を囲んで手を合わせた。

 

 

 

不思議鳥と野菜のスープと鶏肉炒め、添え付けで野菜サラダという栄養面も整った夕食のメニュー。

合掌をしてからほぼ同時に三人はまず鶏肉炒めから口をつけ、その途端に恭也とリーンは何とも微妙そうな表情を浮かべる。

 

「不思議な味が、しますね……」

 

「不思議鳥なだけに、な……」

 

決して不味いというわけではない。だが、太鼓判を押すほど美味しいというわけでもない。

何とも微妙としか言いようがない。その原因は味付けよりも、肉の風味が勝ち過ぎているという点であった。

味付けのほうが勝ち、肉の風味が若干残る程度が本来ベスト。だが、これではただ味付け無しで肉を炒めただけのようなもの。

そのため二人が浮かべるのは微妙な味故に微妙な表情。しかし、その中でただ一人だけ様子が異なっていた。

 

「~~♪」

 

至福の表情で鶏肉炒めを頬張りつつ、スープを飲み干す。極め付けには、お替わりさえ求めてくる始末。

これには二人とも驚きと同時に呆れが顔に浮かぶ。だが、そんな表情も今のフィーナを見ていると笑みへと変わってしまう。

素材を獲りに行くにも遠方だから遠出、調理にも少しばかり時間を掛けた。その結果が、こんな微妙な味わいの料理。

でも、それを求めたフィーナが喜んでいるならいいか……互いに笑い合いつつそう思う事とし、二人は二口目を口に運びだすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

蒼鳥さんの100000万ヒットのリクエストでした~。

【咲】 その前のキリリクを差し置いて、何でこれなのよ?

ん~、なんていうか、リクエストをしてもらっておきながらUP出来てないだろ?

だからさ、せめて現状で書きやすいこれだけでも上げておかねばと思って……。

【咲】 申し訳ないと思うなら、ちゃんと定期的に上げればいいじゃない。

他の更新があって中々そっちに手がいかんのだよ……しかも最近、仕事がちょっち忙しくなってきたし。

【咲】 それでもキリリクを書くのは謂わば義務みたいなものじゃない。

それはそうなんだけど……ま、まあ、これを上げたという事でとりあえず許してくれ。

【咲】 私は別にいいけど……そういうのはリクエストをした人に言うべきじゃないの?

それもそうだな。いやその……どうもすいません、ほんとに。

【咲】 はぁ……で、今回のリクエストは恭也×フィーナだったわけだけど、恋愛系ではないわね?

そりゃ無理ってもんだ。本編のストーリー上で二人はくっつくわけじゃないから、これでくっつけたらIFになっちゃうだろ。

【咲】 それでこういう形にしたと? でもさ、フィーナだけじゃなくてリーンもいるわよね?

昔の話を題にしてるから、出てこないと可笑しいからな。出て行った後なら話は別だが、それだと若干重い話になるし。

【咲】 ふ~ん……にしても、この頃のフィーナは本編のほうとは全然性格が違うわね。

仕方ないさ。本編ではリーンが去った後だから、その分しっかりしないといけないという思いが彼女に圧し掛かった結果なのだよ。

【咲】 なるほどねぇ。ところでさ、この番外編っていうのはまたあったりするわけ?

さあ、どうかな……気が向いたらするかもしれん。というか、まず本編を進めないかんし。

【咲】 それもそうね。それじゃ、今回はこの辺でね♪

改めまして蒼鳥さん、キリ番ゲットおめでとうございました!!

【咲】 じゃ、ばいば~い♪

 

 

 

 

 

 

 

感想は掲示板かメールにて。

 

 

 


 

 

 

 

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