このSSは私の作品の一つである「魔法少女リリカルなのはB.N」と「テイルズオブヴェスペリア」とのクロスです。

時間軸は後者のリタ加入時のところから。前者からの出演者は基本的に恭也とリースの二人に絞られます。

物語後半になってくるとどうなるかは分かりませんが、基本はそういった感じですので読む人を限定する作品になるかと思います。

ですから上記の条件を読んだ上で納得できる方で読んでみようという方は是非ともお読みくださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学術都市アスピオ。そこは暗い洞窟の中に建つ、主に魔導器(ブラスティア)についてを研究する科学者が住まう街。

 

そんな街だからこそ決して活気があるとは言えず、それどころか近場の街の住人からは薄気味悪いとまで言われている。

 

だけど、その周りからすれば薄気味悪い人々と認識されるアスピオの住人の中でも、特に『変人』と呼ばれる少女がいた。

 

彼女の名は、リタ・モルディオ。若干十五歳にしてアスピオにその人ありと呼ばれる天才的な頭脳を持つ研究者にして魔導師。

 

でも、魔導器に最大の愛情を注ぐ半面、彼女は人間というものを信じない。決して心を許さず、人を人としてすら見ない傾向すらあった。

 

そんなところも手伝って彼女はアスピオ内で『変人』と呼ばれる。ただ、本人はそう呼ばれている事を知っていても態度を正そうとはしなかった。

 

興味が無かったというのも理由の一つではある。だが、最大の理由となるのは天才と言われる彼女すら悩ませる、二つの研究課題があったから。

 

一つは『リゾマータの公式』。魔導器の動力であるエアルの仕組みに自由に干渉出来ると言われる究極の理論にして、魔導師の最終到達点。

 

そしてもう一つは、『デバイス』と呼ばれる魔導器とは異なる機器。自律した意思を持ち、エアルを用いずに魔法を使用する事が出来る、リタ曰く理不尽な代物。

 

前者のほうは研究を始めた十歳のときからずっと考え続けている。だが、後者のほうは一年前、とある二人の人物と一緒に転がり込んできたから研究しているに過ぎない。

 

とはいえ、『リゾマータの公式』にも近いものがあるソレに興味が惹かれているのも事実。それ故、ソレを研究したいがためにその二人を自分の手元に置いた。

 

ソレを研究すれば、『リゾマータの公式』を掴む足掛かりになるかもしれないから。だけどその事実はアスピオの住人からすれば、かなり驚愕に値する事だった。

 

誰一人として近くに寄せ付けなかった彼女が、自分の家に他人を住まわせているのだから。でも、誰がどう思おうともやはり彼女は何を言い繕うこともしなかった。

 

そして今日も今日とてただひたすら、一年前から途端に騒がしくなった自宅で研究に没頭し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tales of Vesperia B.N

 

     プロローグ1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん……」

 

アスピオの隅の方にある一軒の家。その一階の床にて胡坐を組み、リタは小さく唸っていた。

その彼女の目の前に対するように置かれているのは蒼色の石。一年前から、彼女を悩ませ続けているモノの一つ。

『デバイス』と呼ばれるソレが彼女の家に舞い込んできたのは、本当に運命的としか言いようがない出会い方をした二人の人物の手によって。

そのとき、その二人から『デバイス』という魔導器以外で魔導器に近い力が使える代物の存在を教えられ、それ以来ずっと研究し続けている。

だけど未だ、その構造も術式も理解出来ていない。如何に天才と呼ばれる彼女でも、魔導器でもない完全に未知である物体は専門外なのだ。

それでも研究し続けるのは、解き明かしたい公式があるから。これの全てを解き明かす事でその足掛かりになるのではと思っているから。

 

「エ アルを一切用いないで魔術を使うわけだから、つまりエネルギーとしてるものはエアル以外の何か……アイツの話を元にして考えるなら、それは私たちの言葉で 言うマナに近いもの。でも、近いだけであってエアルが物質へなる過程で形状を固定するのがマナなわけだから理論的には全く別物。となるとやっぱり一番可能 性が高いエネルギー候補は、人間が潜在的に持っている魔力。でも、これを意識的に引き出して使うなんて技術、どうやったら――はがっ!?」

 

ブツブツと呟きながら悩み続ける彼女から突如放たれた奇声。その理由は、二階のほうから何かが彼女の頭上に落下してきたから。

二階と言っても大した高さではなく、落ちてきた物を見てみれば百にも満たないページ数の本。それ故、意識が飛ぶような事は無い。

だけど激しく痛い事には変わりなく、リタは落ちてきた物を確認した直後に二階へ睨みの視線を向ければ、その先には本を落とした張本人の顔があった。

 

「あ~、ごめんごめん。あんまりに散らかってるから整理してたら、うっかり落としちゃった♪」

 

「ア、アンタね……今の、絶対わざとでしょ!?」

 

「いやいや、さすがに今のはわざとじゃないよ。それにさ、わざとするならもっと厚手の本を使ってるって」

 

「さらっと怖い事言ってんじゃないわよ!!」

 

梯子を使って降り、本を回収しつつ軽い謝罪をしてきたのは一年前、『デバイス』という研究対象を齎した二人組の一人。

名をリースというその少女はリタが悔しくも認めざるを得ないほど頭が良い。少なくとも、同年代で彼女ほどの者を見た事が無いと思うほど。

ただ性格的に非常にリタとは合わず、今のように嫌がらせに近い事をしょっちゅうしてきてはそれが元で魔術を用いての喧嘩に発展する。

放っておけば家が倒壊しかねないソレを毎回止めるのは、二人組のもう一人たる青年。名前を高町恭也という、この世界では非常に珍しい名前の人物。

しかし、現在彼はリタのお願い(半ば命令)によって近くの街まで買い出し中。要するに、二人の喧嘩を止める者がいないという状況であった。

 

「大体、アンタは図々し過ぎなのよ! アタシのベッドを占領するわ、読む本を探すだけで部屋を荒らし回るわ……少しは遠慮ってものを知りなさいよね!」

 

「いや~、リタがあんまりにも無遠慮な性格だから、私も遠慮なんかしなくていいかなって」

 

「何で家主のアタシが居候のアンタに遠慮しなくちゃいけないの――よっ!!」

 

言い返すと共に構成した魔術――火球をリース目掛けて飛ばす。だが、リースは慣れているかのようにそれを防いだ。

一瞬で構成した防御の魔法で。これを他の者が見ればリタと同等の魔導師かのように彼女の姿は映る。

だが、実際は違う。出会ってから少しして知った事だが、人に見える彼女もまたリタにとって未知なる存在である『デバイス』なのだ。

リタが先ほど向き合っていた『デバイス』――オリウスとは異なる種別。分類的に『ユニゾンデバイス』と呼ばれる彼女。

擬人化というこれまた未知の機能を用いて人の形を取り、どの『デバイス』よりも人間に近いと言われる、『デバイス』の中では一番扱い難く、珍しい代物。

特に彼女は本来『デバイス』には無い人間が潜在的に持つ魔力を持ち、己の身体一つで魔法を使う事が出来る極めて特殊な存在。

最も、本当ならオリウス以上に研究対象として見るべき存在であっても、その性格的な相性の悪さから知って少し後に研究を諦めてしまった。

ただ、だからといってオリウスが二人の所有物である以上、二人の滞在を認めるしかないのは変わらず、結果として彼女の研究を諦めた今でも共にいるというわけである。

 

「くっ――相変わらず、無駄に魔術の腕が高いわね。今のは捉えたと思ったのに」

 

「あれ、珍しい。リタが私を褒めるなんて……今日は雪でも降るかな?」

 

「……別に褒めたわけじゃないわよ。ただ、アンタがアタシにとって潰し甲斐のある奴だって再確認しただけ」

 

「うわっ、凄い不穏な台詞。そんな事口にしてる時点でリタだって私の事言えな――おわっ!?」

 

言葉を言い切る前に再び放たれてきた火球を慌てて防ぐリース。しかし、今度はその一つだけでは済まなかった。

複数の火球を連続で打ち出し、彼女の張る障壁へぶつける。一つ一つが小さな威力でも、集中的にぶつけられたら障壁が持たない。

それ故、リースは火球が障壁へぶつかってから次の球が来るまでの一瞬で障壁を消し、その場から飛び退きつつ蒼色の刃を形成して飛ばす。

さすがに火球を飛ばしながらそれを防ぐ事はリタほどの魔導師でも不可能なのか、攻撃を中断して彼女は飛んできたソレを帯で払う。

彼女の持つ物の中で一番魔導器から魔力が伝わり易い代物である帯。それに魔力を纏わせれば、下級魔術程度なら払い退ける事も可能。

そこは当然、一年もの付き合いがある故にリースも承知している。そして承知しているからこそ、それをする際の弱点も知っていた。

 

蒼き空より舞い降りろ、断罪の刃。我に仇名す敵を討ち、己が罪の深さを知らしめよ

 

「んなっ――!」

 

その弱点というのは極めて単純。払い退けられるのが下級魔術程度までなら、それ以上の相当する魔法をぶつければいいだけの事。

だからこそ顕現したのは詠唱が必要なほどの威力を持つ術式の魔法。顕現する直後に展開した魔法陣でリタにもその威力の程が大体読めた。

読めたからこそ、慌てるを通り越して青褪める。魔法防御の手段は帯以外でもあるが、それを防ぐほど強固な防御力を誇る手段は持ち得ない。

故に青褪めながらも彼女が咄嗟に取った行動は、その場から飛び退くというお粗末な回避運動。だが、お粗末でも回避したのがちょうど刃が放たれた直後だったのが幸いした。

自分がついさっきまで立っていた場所を大きな一本の刃が通過して本棚と本棚の間、その壁にて激突。爆発こそしなかったが、巨大な穴を作って粒子状へと還った。

その光景を目にしてリタは回避が出来た事に安著の息を漏らしつつ、本を頭上に落とされたとき以上に鋭く睨むような眼を彼女へ向けた。

 

「ア、アンタ……アタシを殺す気!?」

 

「ううん、全然全く。大体、そっちと違ってこっちの魔法では非殺傷っていうのが利くんだから、もし当たったとしても死にはしないよ」

 

「……ソレ、前にも同じ事を言った気がするんだけど。確か今のみたいに物質化した魔術は非殺傷が利かなかったはずよね?」

 

「……アハハ、ナンノコトヤラ」

 

武器そのものでの攻撃や先ほどのような刃という物質で固定した状態には非殺傷の設定が働かない。それはデバイスを持つ魔導師として知ってて当然の事。

リタも以前、デバイスの研究をしていたときにソレを聞いた。だから、今のリースの発言が可笑しいという事にも気付く事ができ、指摘する事も出来た。

だけど当の本人は指摘に対してしらばっくれる始末。お世辞にも研究以外では我慢強いと言えない性質のリタが、これに怒りを覚えないわけもなく。

 

「ぐっ――このガキ……いっぺん死なす!!」

 

不穏な一言と共に火球を飛ばし始める。しかも、今まで家が倒壊するからと遠慮していた部分も一切忘れて。

対してリースも刃を顕現して迎え撃つ。こちらは元から遠慮などしていなかったが、それでも少しばかりしていた加減を一切抜いて。

本気と本気でのぶつかり合い。止める人もいない家の中で刃と火球が何度もぶつかり、打ち消し合うように小規模爆発を引き起こす。

その中でただ一人、二人を止めるために声を上げるオリウス。今まで静観していたが、さすがにここで二人が本気を出すのは宜しくないと判断したのだろう。

だけどその声が二人に届く事はなく、魔法と魔術の息をつく暇もない応酬は続き、元々散らかっていた家内はますます荒れ果てていく。

 

 

 

――そんなカオスな状況の中、家の扉をノックする音が聞こえてくる。

 

 

 

当然ながら、その音に二人が気づくわけもない。ただ一人気付いたオリウスが来客ですと言っても、一切耳を貸さず。

それどころか、来客が扉の前にいるなど気づいてもいない二人が放つ刃と火球が扉付近でぶつかり、爆発を引き起こして扉を吹き飛ばしてしまう。

その際に上がる短い悲鳴と扉が壊れる音によってようやく二人は我に返り、喧嘩を中断して家の入口へと駆け寄った。

 

「あちゃ~……またやっちゃった。折角キョウヤに頼んで直してもらったばっかりなのに」

 

「頼んでって言うか、半ば命令に近い形だったけどね。いや、今はそんなことよりもこれをどうにかしないと、また恭也のお小言を受ける羽目になっちゃうよ」

 

「あれは正直勘弁願いたいわよね。床に正座させられて長時間説教、おまけに正論だから反論の余地無し……まさに地獄の時間ってやつよ」

 

リースもリタも、恭也のお叱りを受ける事は多々ある。しかも、基本が二人に非のあるときばかりなので反論のしようがない。

その上、反省の色を見せなければ一時間でも二時間でも床に正座させられ続け、説教が続くので二人としては激しく遠慮願いたい事。

故に何とかして彼が帰ってくる前に扉を直したいところだが、木造りであったがために扉は先の爆発で原形を一切留めてはいなかった。

となれば早急に元から作るしかないのだが、材料を買う事はこの街では出来ないため、外出して近場の街で買ってこなければならない。

だが、アスピオから一番近い花の街ハルルで買ってくるにしても往復で半日は掛かる。その上、その街には現在恭也が買い出しに出ている。

行き違いで戻ってこられても、鉢合わせしてもアウト。そうなると外出して買ってくるのは極めて困難だが、珍しく二人で知恵を絞らせてもそれ以外に手が浮かばなかった。

 

「うぅ……」

 

そんな中、二人のすぐ近くから呻き声が聞こえてくる。それが聞こえた方向は、原形を留めていない扉の破片が散らばる場所。

つまりは家の前。故にそちらへ揃って視線を向けてみれば、先ほどは慌て過ぎてて気づかなかったが破片の下にて人が一人埋まっていた。

金色の短髪、青と銀色の甲冑。見受けられるのはその程度の事だが、それだけで騎士だという事は十分に分かった。

その騎士がなぜ破片に埋まっているのかといえば十中八九二人のせいであり、もし騎士に手を出したのが外に知れたら大事になる。

それ故、二人はこんなときだけ息ピッタリに協力し合い、破片を退かしてその人物の救出へと取り掛かった。

 

 

 

救出した騎士を家の中へ引きづり込み、リタは専門外故にリースが治癒魔法を掛けた。

大した怪我で無かったのが幸いしてか、治癒魔法を掛けてから程なくしてその騎士の意識は次第にはっきりしてきた。

そしてある程度回復したところで騎士の方から自己紹介。何でも彼は帝都ザーフィアスに拠点とする騎士団の小隊長らしい。

名をフレン・シーフォというその青年に対して自分たちも一応自己紹介をすれば、彼は少しばかり驚いた顔でリタを見つつも、早速本題とばかりに話し始めた。

 

「実は、恒例の巡礼の途中でこの近くにあるアスピオが管理する遺跡で盗賊団が出没したという情報を得まして、その上巡礼で窺った花の街ハルルで結界魔導器(シルトブラスティア)が魔物に襲われて壊れてしまうという事態が重ねて発生してしまったんです。このどちらの事態にしても、魔導師の協力無くしては対処のしようがないと考え、窺わせていただきました」

 

「協力ねぇ……そんなの、他の魔導師でもいいじゃない。何でアタシなのよ?」

 

「それは……アスピオにその人ありと言われるほどの天才である貴方なら、一番心強いと考えたからです」

 

「ふ~ん、要するにアタシが協力してくれたら楽に事態を収拾できるって事ね……悪いけど、それだけの理由なら断らせてもらうわ。前者はともかく後者は少し気になるけど、アタシも今は忙しいから、他を当たってちょうだい」

 

基本、騎士団からの協力要請を受ける義務がアスピオの研究者にはある。それは当然、対象がリタにしても変わりはない。

だが、さすがは『変人』と言ったところか、そんな義務など一切守る気なしでばっさり拒否。それ故、フレンも僅かに唖然としてしまう。

しかしすぐに我へと返って食い下がろうとするが、もう聞く耳持たずと言った感じで荒れ果てた部屋の奥の方へと下がっていってしまった。

 

「あ~あ……フラれちゃったね、騎士のお兄さん」

 

「あはは……そうみたい、だね。まさか、騎士団からの協力要請を断られるなんて思っても見なかったけど」

 

「普通の魔導師ならソレで通るでしょうけど、相手がリタだからね~。ま、あんなのはちゃっちゃと諦めて別の人に協力してもらうようお願いしに行った方がいいよ」

 

「そうさせてもらうよ……経験上、あの手の人はいくらお願いしても駄目だろうからね」

 

苦笑しながらそう言うとフレンは立ち上がり、治癒魔法を掛けてくれた事に関しての礼を口にしつつ入口へと歩き出した。

そしてリースが一人見送る中、彼は扉の無い入り口を潜って家を出て行き、その姿が見えなくなるまで見送った後、リースはリタへと駆け寄る。

駆け寄った先で彼女が何をしていたかと言えば、先の騒動で荒れに荒れ果てた部屋の一角にて何かを探すように更に引っ掻き回すという行動に出ていた。

 

「……何してんの?」

 

「扉を直すための材料が何かないか探してんのよ。買い出しに出るのが無理なら、家にあるものでどうにかしなきゃいけないでしょ?」

 

「それは確かにそうだけど……え、何? もしかしてさっきのお兄さんの要請を断った理由って、ソレ?」

 

「当たり前じゃない。大体、それ以外にどんな理由があるっていうのよ」

 

断る理由として何ら可笑しい部分は無いとでも言うかのようにリタは告げるが、義務となっている協力要請を断る理由としては正直不適切極まりない。

だが、当の本人にこれを言ったところで最終的には興味が無いの一言で終わるだろう。どれだけ理由を取り繕っても、結局彼女の判断基準は興味云々なのだから。

それは『デバイス』の研究がしたいからと恭也とリースの二人を自宅に住まわせているという事実からも容易に推測出来る故、リースはそれ以上何を言う事もなかった。

ただ内心で興味を持たれなかったフレンに対してご愁傷様とだけ告げ、自身もまた扉の材料を探すために荒れ果てた家の中を駆け回るのだった。

 

 

 

フレンが去ってから扉の材料を探し続ける事、早二時間。一応、ギリギリ直せるかぐらいの材料が集まった。

ただ材料に統一性がまるで無く、基本的にはせっせと集めた扉の破片にて足りない部分をソレで補う形になるため、出来たとしても継接ぎだらけの扉。

だがまあ、無いよりはまだマシだろうと二人は考え、集めた材料で早速作業開始。まずは扉の破片をパズルでもするように組み合わせ、足りない部分を算出。

これを二人で早急に三十分程度で済ませ、続けて足りない部分に見合う形と大きさの材料を集めた中から探す。無ければ、近い物を簡単に加工して作る。

その際に加工のために必要且つ適切な機器が無いため、こういう使い方はどうかと思いつつも仕方なく魔術(リースの場合は魔法)で代用。

若干力の加減が難しくもあったが、少しだけ慎重に行い、時間を掛けて行った故か問題無く終了。その後、それらを扉の欠けた部分へくっ付け、ようやく完成を果たした。

 

「ちょっと歪だね、形……」

 

「仕方ないわよ、本来別の物に使う代物を使って直したんだから。むしろ、扉の形をしてるだけでマシなほうだわ」

 

「それもそっか。じゃあ、早速これを入口にっと……」

 

完全に以前の物よりも歪に出来た上、二人は気づいていないが鍵とか取っ手とかという重要なものが欠けていた。

だけど扉が完成したという満足感から結局そこに気づく事もなく、二人で完成した扉を入口まで運び、元のように設置して作業終了。

途端、作業を終えた達成感から脱力したかのように二人して床に座り込み、ほぼ同時に小さく溜息をついた。

 

「何か、無駄な体力使ったって感じね……」

 

「だねぇ……ていうか、実際はまだコレで終わりじゃないんだけどね。さっきまでので散らかったものとか、片づけなきゃいけないし」

 

「……はぁ。この調子だとまた今日も研究が進まずに終わりそう……ほんとアンタらが来てから厄日続きよ、この一年間」

 

「よく言うよ……その厄日の種を自分の興味云々で居座らせてるくせに」

 

悪態を付けば悪態で返すがどちらの声にも力が無く、またも先と同じように揃って溜息をつく二人。

普段家の中にいる事が多いせいか体力が基本的に低い証拠。だから、扉を修繕するというだけでこれだけ疲れてしまう。

まあ、どちらにしても二人の自業自得であるのだが、基本的にソコを理解していても喧嘩に発展した時点で家倒壊の危機に繋がるのが二人の性。

だから歯止め役の恭也がいない時点でどうしようもない。だから、頭では分かっていても実際に改めるという事は無理だと二人とも諦めきっている。

それは言い換えれば、リースもリタも彼に依存している事になる。加えて何だかんだ言っても、リースと喧嘩する事も最近では半分日常化してきている。

つまりは総じて、二人とリタが出会ったあの日から――――

 

 

 

 

 

――三人でいる事が普通になってきている証拠なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

プロローグ1となる今話は、ユーリたちとリタが出会う前日のお話をさせていただきました。

【咲】 プロローグなのに、珍しく恭也とリースの二人がリタと出会った日の話とかじゃないのね。

それは一本で収めるにはあまりにも短いお話だから、本編の途中で回想って形で語るという形にしてみた。

【咲】 ふ~ん……まあ、いいけど。で、プロローグ1って事は当然2もあるのよね?

あるね。プロローグ2では二人がこんな騒動を起こしている最中の恭也サイドを描こうかと考えてる。

【咲】 ってことはハルルでお話って事よね? 確か、フレンがリタの家を訪ねた時期ってユーリたちがハルルにいなかったかしら?

実際にその時期かどうかは微妙なところだが、俺はそういう方向で考えてる。

【咲】 ということはつまり、プロローグ2で恭也はユーリたちと出会うと?

そういうことになるね。

【咲】 どういう出会い方をするのか、ちょっと興味深いわね。

そんなに変わった出会い方じゃないと思うけどね。

【咲】 そうなの?

たぶん……まあ、そこも含めて次回を期待しててくれ。

【咲】 はいはい、了解。じゃあ、短いけど今回はこの辺でね♪

また次回会いましょう!!

【咲】 それじゃあね、バイバ~イ♪

 

 

 

 

 

 

 

感想は掲示板かメールにて。

 

 

 

 

 

 

 

 

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